『「定額課金」の3つの難しさ』

サブスクリプションビジネス成功の鍵:定額課金モデルの「3つの難しさ」

世間では、Netflixに代表されるような「定額課金=サブスクリプション」という認識が広がり、成功例が喧伝されています。しかし、サブスクリプションの本質は、サービスや商品の対価として定額を支払うことではなく、「顧客との継続的な関係が担保されていること」にあります。定額課金や「〜放題」といったモデルは、その本質を実現するための「商品の一つの在り方」に過ぎません。

それにもかかわらず、多くの事業家が定額課金に魅力を感じますが、実はこのモデルには綿密な設計が求められます。定額課金モデルを採用する際に直面する、特に注意すべき3つの難しさを見ていきましょう。


1. 事業ドメインの適・不適:「顧客数の極大化」の必要性

定額課金モデルの収益は、シンプルに考えると「購入頻度 × 購入額 × 顧客数」で決まります。しかし、定額課金にした瞬間、「購入頻度」と「購入額」は固定されてしまいます。これにより、収益を伸ばす唯一のドライバーが「顧客数」の極大化になります。

このため、定額課金モデルが向いているのは、Netflixのようなコンシューマー向け(C向け)ビジネスです。潜在顧客が無尽蔵に存在し、解約があっても新規顧客を継続的に補充することで、顧客数を極大化できるため、定額課金が事業の主軸として機能します。

一方、法人向け(B向け)ビジネスのように、ガソリンスタンドの給油器販売のように顧客の上限が限定的なドメインでは、顧客数の極大化が難しく、自ら事業成長に歯止めをかけてしまう設計になりかねません。

2. 不均衡モデル:事業維持に必要な「哀れな子羊」モデル

従来の都度課金モデルでは、売り手と買い手の経済合理性は常に均衡します。しかし、定額課金、特に「〜放題」モデルでは、経済合理性のバランスが取れるのは、特定の利用量を示すスイートスポットの「1点」だけとなります。このモデルは、「不均衡」を前提としなければ成立しません。

定額課金モデルを成立させるには、利用量が極めて少なく事業者が得をする層、すなわち、メーカーの損失を埋める「養分(哀れな子羊)」ユーザーの利益で、赤字となるヘビーユーザーの利用分を補填する必要があります。

この不均衡モデルの設計には、主に3つの類型があります。
一つ目は、ユーザーの満足度を追求しすぎ、事業側が継続的な赤字となり撤退する「砂漠化モデル」です。二つ目は、ライトユーザーからの利益でコストを賄う、最も一般的な成功モデル「哀れな子羊モデル」です。そして三つ目は、市場を独占しているため、強気の価格設定で収益を最大化できる「王者の剣モデル」ですが、これは実現難易度が最も高いモデルです。


3. 経済合理性の見えやすさ:利用価値を「不可視化」する

定額課金モデルの成功を左右するのは、顧客が「得か損か」を判断する経済合理性の可視度です。

飲料の飲み放題のように、代替品や価格が明確で、損得の計算が容易な場合、ユーザーは損と判断すればすぐに解約するリスクが高くなります。このようなモデルは「砂漠化モデル」へ移行しやすい傾向があります。

これに対し、成功している定額課金モデルの多くは、提供する価値を多様化・複雑化し、ユーザーが単純な損得計算(割安かどうか)で判断できないように「経済合理性の不可視化」に成功しています。例えば、Amazonプライムのように、配送、動画、音楽など多種多様なサービスを一つの会費に含めることで、顧客は複数の価値を総合的に判断し、離脱しにくくなります。

定額課金モデルは、これら3つの難しさを理解し、事業ドメインや商品特性に合わせて、継続的な関係性を維持できる緻密な設計があって初めて、持続可能なビジネスとなり得るのです。


  

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本ページでは、解説動画の内容を要約してテキスト形式でご紹介しております。
サブスクリプション事業について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひ解説動画をご覧ください。

<動画概要>
テーマ :『「定額課金」の3つの難しさ』(約24分)
解説者 :株式会社サブスクリプション総合研究所
     代表取締役社長 宮崎琢磨
視聴方法:動画のご視聴にはお申し込みが必要となります(無料)





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